KC-RN210CSNとは

1996年、団地輸送用に大量導入された長尺かつ3扉という立派な仕様の大型車の多くが引退の時期を迎えました。しかし、団地の人口増加の陰りや高齢化の兆しも見え、京王帝都電鉄(当時)は思い切った車両のダウンサイジングを実行。代替にあたっては「これまでの中型車より小さく、なおかつ低床の路線バスを」と日産ディーゼル(現・UDトラックス)に要望したところ意気投合。その後の両社による共同開発の結果、中型幅7mというサイズながらワンステップフロアを市販車では初めて実現した車両として発売されました。これが「KC-RN210CSN」、90年代末期から近年までの京王バスを象徴する車の起源でした。

折しも、当時は東京都武蔵野市の「ムーバス」に端を発したコミュニティバスブーム。当時、コミュニティバス向けとされていた車種の多くはツーステップ車で、電動リフト等でカバーするのが精いっぱいという状況であり、スロープ板付ワンステップというRNにより大幅なサービスアップが望めるということでコミュニティバス方面に高い人気を誇りました。

当然ながら、共同開発した京王帝都電鉄も追随。社番の頭数字「7」を新たに設定して気合いも十分に導入が開始されました。製造初年の1996年式は少数に留まったものの、翌1997年には京王がさらに注文を加えてフロントマスクを変更した所謂「京王顔」と呼ばれるグループが大量に入ってきました。調布にL79751〜79784まで34台を一斉配置するなど計64台を導入。ただ、折しも1998年には国産初の量産ノンステップバス「UA460KAM」がやはり日産ディーゼルから発売されたうえ、極端なダウンサイジングの影響がかなり大きかったしたこともあり再び輸送力増強路線に転換。新車導入は前述のノンステップバス・UA460KAMや中型幅の10.5m車(中型長尺車)、通常の中型車にシフトしていきました。

そして、翌1999年がついに京王のRN導入最終年となりました。しかしながらこの年に導入されたのは新宿パークタワー「OZONE」のシャトルバス用に特定用途で導入された3台。RNの特定用途車はこれが最初で最後、しかも京王が拘った「京王顔」を持つ富士重ボディではなく西工ボディを架装しての登場となり、異色の存在となりました。

L79952 〜K79952として特定用途で登場、流転〜

さて、今回主役として取り上げるL79952は社番からも分かる通り1999年式車。「む?」となった方は上の文章を読んで下さったんですねありがとうございます。この車は特定用途から一般乗合へと用途変更&塗装変更の行われた車両で、複雑な経歴の持ち主です。

実はこの車両、張り切って「OZONE」シャトルバス専用カラーリングで登場したものの、同ビルを所有しているのが東京ガスで、ビル内には東京ガス関連企業が多く入居していることもあり、2003年をもって天然ガス燃料(CNG)を使用する三菱ふそう製で同じ7m級のバスに置き換えられてしまっていたのです。未だ車齢の浅い3台は各々別の道を歩み出します。

L79952 〜一般乗合化、B79952として府中に〜

さて今回の主役の79952は府中に転属しB79952として他のRNと共通運用とされました。前後面と側面へのLED表示機設置と車内への降車ブザーを装着が行われました。特筆すべきは側面表示機の設置方法で、前中扉間の窓枠を上下逆に組み合わせて大型のLED表示機を設置するという京王らしからぬ大がかりな方式を採っています。
※ちなみにこの当時の画像はありません。さすがにこの1台に的を絞って府中管内のRN運用路線をに巡るほどの財力と体力はありませんでしたので。

L79952 〜再び転属、調布で静かな最期〜

そして2010年春、またもや79952には転機が訪れます。調布営業所管内でも有数の狭隘路線であった[調50](現在は廃止)・[調51]には7m級の車両が限定運用されており、そこに充当されていた同型式のL79766がKC代の1997年式ということでNOx・PM法による使用期限を迎えたため、その代替として79952が転属、L79952となったのです。転属に当たっては、当然ながら中乗り→前乗り化と京王バス中央→京王バス東へと社名表記の変更が行われていますが、それ以外には目立った変更点もなく、ほぼ府中営業所時代のままの姿で活躍を続けています。ここからは私の得意分野の調布ですので画像を中心にお送りします。

〜アルバムから〜

まずは型式写真から。定石通り、調51にて活躍中の姿。

リアになります。

住宅街と巨大マンションに挟まれた狭隘路を行きます。これが日常の姿であるのもあと少し。

調51で運用していない場合は調布車庫の一番手前、ミニバス専用スペースで休憩をしていました。末期は新設された分車庫に居る姿も時折見かけられました。

これは2011年も暮れが押し迫った12/28の撮影。出庫……ではなく分車庫への回送シーンです。

雪の日にも運用入りしていました。小さい車体に中型車用のエンジンですから、多少足元が悪くなっても力強く走ってくれます。

リア。「深大寺そば 多聞」の広告シールが調布所属であることを主張します。

2012/3/26に新設された調51の区間便、上石原三丁目止まりの運行初便にも充当。調51に中型車が入るようになり運用入りの頻度が減少していただけに、大きなサプライズでした。

上石原三丁目止まりを含む運用への充当回数は私が確認できた限りで3回。

同じく上石原三丁目行き。

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